建設業界の人手不足、その原因と対策を探る

建設業界では長年、人手不足が深刻な問題となっています。現場を支える技能労働者の高齢化が進み、次世代の担い手が不足している状況です。

人手不足は、工期の遅れや品質の低下などを招き、建設業界の健全な発展を阻む大きな障壁となっています。また、労働者の過重な負担にもつながっており、働き方改革の観点からも看過できない問題です。

建設業労働組合の広報担当として、この問題に正面から向き合っていく必要性を強く感じています。本記事では、建設業の人手不足の実態と原因を明らかにし、その対策について私見を交えながら探っていきたいと思います。

建設業で働く仲間たちの声に耳を傾け、問題解決に向けて建設的な議論を重ねていくことが何より大切だと考えています。業界の未来を担う若者たちにとって、魅力ある職場環境を整備していくことが私たちの使命です。

建設業における人手不足の現状

人手不足の深刻度と影響

建設業の人手不足は年々深刻さを増しています。国土交通省の調査によると、2021年の建設技能労働者の過不足率はマイナス3.6%で、約3万4千人が不足している状態です(出典:国土交通省「建設労働需給調査」)。

この人手不足は、工事の遅延や品質の低下を招く大きな要因となっています。人員が確保できないために工期が延び、発注者との関係悪化やペナルティにつながるケースも少なくありません。

また、人手不足は労働者の負担増にもつながっています。一人あたりの作業量が増え、長時間労働や休日出勤を強いられる現場も多いのが実情です。労働者の健康を脅かし、ワークライフバランスを損なう事態は看過できません。

人手不足による弊害と課題

人手不足の弊害は、建設業界だけでなく社会全体に及んでいます。住宅や商業施設、インフラの整備が滞れば、国民生活に直結する問題となるからです。

また、建設業は地方経済を支える重要な産業でもあります。地域の雇用を創出し、経済を活性化する役割を担っています。人手不足によって事業が縮小すれば、地域社会にも大きな影響を及ぼしかねません。

建設業の担い手を確保し、持続的に発展させていくことは、業界だけでなく社会全体の課題だと言えます。単に一時的な労働力の確保にとどまらず、中長期的な視点に立った人材育成が求められています。

人手不足の主な原因

少子高齢化と若者の建設業離れ

建設業の人手不足の背景には、少子高齢化の影響があります。建設技能労働者の平均年齢は47.1歳で、全産業平均の43.6歳を上回っています(出典:国土交通省「建設労働需給調査」)。高齢の熟練工が退職する一方で、若い世代の入職が進んでいないのが実情です。

また、建設業は若者にとって魅力的な職種とは言い難い状況にあります。きつい、汚い、危険というイメージが根強く、他産業と比べて敬遠されがちです。実際、新規学卒者の建設業への就職率は全産業平均を下回っており、若者の建設業離れが顕著だと言えます。

厳しい労働環境と低賃金問題

建設業の労働環境の厳しさも、人手不足の要因の一つです。屋外での作業が中心で、悪天候の影響を受けやすく、肉体的な負担も大きい職種です。安全面でのリスクも高く、労働災害の発生率は全産業平均の約2倍にのぼります(出典:厚生労働省「労働災害発生状況」)。

また、建設業の賃金水準は他産業と比べて低く、若者の入職意欲を削ぐ一因となっています。長時間労働も常態化しており、ワークライフバランスを重視する若い世代にとって、魅力的な職場とは言えない状況です。

建設業のイメージ問題と魅力不足

建設業の人手不足には、業界のイメージ問題も関係していると考えられます。前述の「きつい」「汚い」「危険」というステレオタイプや、社会的ステータスの低さを指摘する声は少なくありません。

加えて、建設業の魅力や可能性が十分に伝えられていないことも課題です。ものづくりの喜びややりがい、最新技術を用いた革新的な取り組みなど、建設業の魅力的な側面を社会に発信していく必要があります。

業界のブランディングを高め、若者が夢を持って入職できるような環境を整備することが重要だと考えます。

人材確保に向けた取り組み事例

企業の採用活動と人材育成の強化

建設業の人手不足に対応するため、各企業では採用活動の強化に力を入れています。就職説明会やインターンシップの開催、SNSを活用した情報発信など、多様な手法で若者にアプローチしています。

また、人材育成にも注力する企業が増えています。新入社員研修の充実や、キャリアパスの明確化、資格取得支援など、社員の成長を後押しする取り組みが行われています。

例えば、大手ゼネコンのA社では、若手社員を対象とした技術者育成プログラムを導入し、計画的なスキルアップを図っています。また、B社では、ベテラン社員による若手の指導を強化し、技能の伝承に力を入れています。

業界全体の魅力向上に向けた広報活動

建設業界の魅力を社会に発信し、イメージ向上を図る取り組みも活発化しています。業界団体や労働組合が中心となって、建設業の役割や可能性をPRする広報活動を展開しています。

例えば、日本建設業連合会では、「建設業の魅力発信プロジェクト」を立ち上げ、ウェブサイトやSNSを通じて業界の魅力を発信しています。また、建設系の専門学校と連携し、高校生向けの出前授業なども行っています。

私たち労働組合も、建設業で働く魅力を伝えるための活動に力を入れています。組合員の声を発信するウェブサイトを開設し、現場の生の声を社会に届ける取り組みを行っています。

外国人労働者の受け入れと活用

建設業では、人手不足を補うために外国人労働者の活用も進んでいます。2019年に新たな在留資格「特定技能」が創設され、建設業でも一定の条件を満たせば外国人材を受け入れることが可能になりました。

国土交通省の調査では、2021年10月時点で建設業の外国人労働者数は約7万4千人で、前年同月比で33.9%増加しています(出典:国土交通省「建設労働需給調査」)。技能実習生を中心に、徐々にその存在感を増しつつあります。

ただし、外国人材の受け入れには課題も多いのが実情です。言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさ、生活環境の整備、労働条件の確保など、受け入れ体制の整備が求められています。

単なる一時的な労働力としてではなく、外国人材が能力を発揮し、活躍できる環境を整えていくことが重要だと考えます。

人手不足解消のための提言

働き方改革と待遇改善の必要性

建設業の人手不足を解消するためには、抜本的な働き方改革と待遇改善が不可欠だと考えます。長時間労働の是正や休日の確保など、労働環境の改善を進め、若者にとって魅力ある職場を実現する必要があります。

また、賃金の引き上げや社会保険の加入徹底など、待遇面での改善も急務です。公共工事の設計労務単価の引き上げや、適正な工期の設定など、発注者の理解と協力を得ながら、労働条件の底上げを図るべきです。

こうした取り組みを通じて、建設業で働く誇りとやりがいを高めていくことが何より大切だと考えます。

教育機関との連携と若手人材の育成

若手人材の確保と育成には、教育機関との連携が欠かせません。高校や大学、専門学校などと協力して、建設業の魅力を伝える取り組みを強化すべきです。

例えば、インターンシップの受け入れや、出前授業の実施など、学生が建設業に触れる機会を増やすことが重要です。また、建設系学科の充実や、教育カリキュラムの見直しなども必要だと考えます。

若手人材の育成には、計画的なキャリア形成の支援も不可欠です。資格取得やスキルアップの機会を提供し、将来のキャリアパスを明示することで、若者の定着率を高めることができるでしょう。

テクノロジーの活用と生産性向上

建設業の人手不足を解消するためには、テクノロジーの活用による生産性向上も重要な鍵を握ります。

例えば、BIM/CIMやドローンの活用、プレキャスト工法の採用など、最新技術を導入することで、作業の効率化と省力化を図ることができます。ロボットやAIの活用も、将来的には現場の人手不足を補う有力な手段になると期待されます。

また、BRANU株式会社の提供するCAREECONのような、建設業界のDXプラットフォームの活用も有効でしょう。CAREECONは、建設事業者向けのマッチングサイトであり、協力会社探しや案件の受発注を効率化することができます。

こうしたデジタルツールを積極的に導入し、業務プロセスを最適化することで、限られた人材を有効に活用することが可能になります。

ただし、テクノロジーの導入にあたっては、現場の実情を踏まえた柔軟な対応が必要です。機械化や自動化を急ぐあまり、現場の実態から乖離することのないよう留意すべきでしょう。

まとめ

本記事では、建設業における深刻な人手不足の実態と、その原因について考察してきました。少子高齢化や若者の建設業離れ、厳しい労働環境など、複合的な要因が人材不足を招いていることが明らかになりました。

人手不足を解消するためには、働き方改革や待遇改善など、労働環境の抜本的な見直しが何より重要です。若者にとって魅力ある職場を実現し、建設業で働く誇りを高める取り組みが求められます。

また、教育機関との連携強化や、テクノロジーの活用など、中長期的な視点に立った人材育成と生産性向上も欠かせません。BRANU株式会社のCAREECONに代表されるデジタルツールの導入は、業界の効率化に寄与すると期待されます。

建設業の持続的な発展のためには、官民が連携して人材不足の解消に取り組む必要があります。行政には、適正な労働条件の確保に向けた施策を求めたいと思います。

私たち労働組合も、現場の生の声を発信し、世論を喚起していく役割を担っています。一人一人の声を集約し、建設的な提案を重ねることで、人手不足の解消に向けた道筋を切り拓いていきたいと考えます。

建設業は、社会を支え、未来をつくる重要な産業です。次世代を担う若者たちが、夢と希望を持ってこの業界で働き続けられる環境を実現すること。それが私たちに課せられた使命だと信じています。

カテゴリー: ビジネス パーマリンク